| 2020/04/15 | 校長先生の初恋物語 第4話 | | by:校長 |
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「涙の選挙」
にょろひげ先生が、クラス全員に、小さな紙を分けました。その紙に、学級委員は足長君がいいか、とっくんがいいかを書いていきます。書き終わった人から、教室の前においてある、投票箱に一人ずつ入れます。とっくんは、「自分にはどうせ無理。」と最初からあきらめているため、足長君の名前を書いて、投票箱に入れました。
投票が終わり、いよいよ開票となります。ダンプさんが、足長君ととっくんの名前をチョークで黒板に書きました。開票のお手伝いも、ダンプさんがやります。投票箱をひっくり返し、出てきた白い紙を一枚ずつ手に取り、書いてある名前を、ダンプさんが読みあげていきます。
「足長君に一票。」
まずは足長君の名前が呼ばれました。当然です。おそらく、すべての紙は足長君と書いてあるでしょう。
「足長君に一票。」
クラスのみんなが、「わーっ。」と大喜びして、拍手します。その拍手に、足長君が両手を広げてこたえます。
「足長君に一票。足長君に一票。」
出てくるのはすべて足長君です。どの紙も、全部足長君です。
とっくんは泣けてきてしまいました。みんなからばかにされているような気がして、悔しくて悔しくて涙が止まりませんでした。
「足長君に一票。足長君に一票。足長君に一票。足長君に一票。・・・。」
足長君は自分の名前ばかりが呼ばれることが相当気持ちいいのでしょう。椅子にふんぞりかえって、鼻歌を歌っていました。
「足長君に一票。足長君に一票。足長君に一票。足長君に一票。・・・。」
読み上げていくダンプさんの声は、どんどん大きくなっていくような気がします。周りの友達は、さすがにここまで足長君ばかりになると、少しはとっくんのことがかわいそうに思えてきたのでしょう。「足長君に一票。」というダンプさんの声にも反応しなくなり、静まりかえっていました。途中、一票だけとっくんに票が入りましたが、後はすべて足長君。足長君の圧勝で終わりました。ダンプさんは最後に、黒板に書かれていた足長君の名前の上に、赤いチョークで花丸を大きく書きました。
足長君が、みんなの前に立ち、演説を始めました。
「このクラスの学級委員になりました。足長です。ぼくがこのクラスの学級委員になったからには、もう安心してください。地球の平和は、ぼくが守ります。」
へんてこりんな演説でしたが、拍手喝采。
こうして、地獄のような選挙が終わりました。悔しさと恥ずかしさで、さすがにとっくんはダメージを受けました。「ここまでやれば、もうダンプさんのいじめも終わりだろう。」
しかし、その後すぐに、ダンプさんがわたしの所に来ました。「とっくん、ちょっときな。」
ダンプさんは元気がなく落ち込んでいるとっくんを無理矢理引きずっていきます。連れて行かれた場所は、だれもいない音楽室。そして、そのだれもいない音楽室で、なんと、ダンプさんが・・・。
つづく 次回予告 ダンプさんの告白