かがやき学級の方から、「鬼はー外、福はーうち。」と威勢のいい声が聞こえてきました。みなさんのお宅でも、豆まきをしたり、えほうまきを食べたり、「節分」の行事を楽しんだでしょうか。
わたしの子どもたちがお世話になった保育園は、毎年節分の時、役員のお父さんが鬼役になり豆まきを行います。わたしの娘が年長の時には、当時保護者会長を務めていたわたしが鬼役となりました。
「とことんやってください。」
という園長先生の指示を素直に聞きすぎた私は、保育園の伝説となるほどの鬼となりました。園庭で暴れ、廊下で吠え、「悪い子はおらんかー。」と、途中で秋田のなまはげも混ざり、保育園は大混乱。歩きの苦手な幼児も怖さのあまり歩き出し、若い保母さんは子どもを置き去りにして逃げ惑い、我が娘がいる年長クラスの子どもたちは号泣でした。
そんな史上最強の鬼に向かって、たくましく豆を投げてくる子がいました。つかまった友だちを守るんだと思いっきり投げつけてきました。投げる豆がなくなると、怖くて何もできない子の豆をひったくって、「鬼はー外-」と孤軍奮闘でした。その男の子の勇気に免じておおげさにやられてあげました。
「うわーっ。もうだめだー。」
とうめき声を上げてその場に倒れて、体をけいれんさせてぐったりとしました。自分でもほれぼれするような演技でした。子どもたちのパニックはおさまり、みんなは「ばんざーい。」と大喜びでした。残った豆を横たわった鬼に投げつけて、とどめを刺そうとする動きもありました。
そんな中、火が付いたように泣いて保母さんを困らせた子が我が娘でした。
「パパが死んじゃったー。」
と泣いていました。
家で娘に聞くと、「鬼の目がパパだった。」と言いました。
鬼のお面の奥に見えたちっちゃな目だけで自分のお父さんが分かった我が娘。なんてすてきな子でしょう。「泣いた赤鬼」のように、鬼の目に涙がにじんできました。