6年生のみんなは、気づいているだろうか。愛音さんのつぶやきを。一番前の席にいるから、先生は気づいているんだ。愛音さんのつぶやき。みんなはおそらく知らないと思う。一番前の席の愛音さんの小さなつぶやきは、きっと後ろのみんなには届いていないと思う。小さな小さなつぶやき、でもそのつぶやきは、とても素敵なつぶやき。先生は大好き。
クラスの中で、がんばっている人がいる。そんな人に気づいたとき、愛音さんは、自然とつぶやいている。「樹里さん、すごい。」これは、国語の授業でつぶやいた言葉。この日樹里さんは、発表をがんばった。それに気づいたのが、愛音さん。「琳ちゃんすごい。」修学旅行のグループリーダーに手を挙げて立候補した琳さんの姿を見て、愛音さんはつぶやいた。「奏斗君すごい。」「歩華ちゃんすごい。」「陽信君の作文すごい。」「かの子ちゃんの説明すごい。」こんな感じで、愛音さんは友だちのがんばりを心で感じて、ぼそっと口にする。
愛音さんは、なわ跳びが苦手だった。できない技もたくさんあった。でも、文化祭で発表できるまでになった。きっかけはなわ跳びをがんばっている友達を見たから。「夢奈ちゃんすごい。」これがスタート。自分もそうなりたいと、練習を始めたんだ。
愛音さんは、発表が苦手。でも今はがんばっている。手が挙がるようになっている。それだって、発表をがんばっている人たちを見て、「美佑さんすごい。」「歩華ちゃんすごい。」って心で感じて、自分もがんばるようになったこと。
愛音さんにとって、友だちはみんな太陽。友だちが光り輝くから、自分もがんばろうと思える。太陽は、歩華さん。太陽は夢奈さん。みんなが太陽。
そして、愛音さんも太陽。愛音さんを見て、がんばっている人だってたくさんいる。愛音さんだけじゃない。今、このクラスは、一人ひとりが太陽になっている。
だれかに照らされて、だれかを照らして、わたしたちはみんな誰かのためになくてはならない存在になっている。自分もみんなにとっての太陽になっているということに、自信をもてばいい。