金子みすゞ「ふしぎ」授業①
先生「ふしぎの詩を授業します。だれか読んでくれる人はいますか。」
この時、子どもたちの数人が手を挙げます。ほんの数人です。
先生「たった一人で声を響かせる体験をした人ほど、本読みは上手になっていくんだよ。上手になるチャンスをだれかにあげるなんて、もったいない。」
すると、春菜さんの迷う声が聞こえてきました。
「どーしっかえー。やってみよーっかえー。うーん。うーん。迷う・・・。」
こんな迷いもいいんです。迷うって大事なこと。ですからしばらく春菜さんを待ちます。すると、春菜さん、こんな決断をするんです。
「よし、やってみる。」
そして、手を真っ直ぐに挙げました。お見事。立派。
春菜さんが、「ふしぎ」の音読を始めます。つっかえたところもあるけど、心がこもっている感じがしていい。みすゞさんの、「不思議だなぁ。」って感じが良く分かる本読みでしたよ。終わった時には、みんなが自然と拍手。この拍手も、このクラスのいいところだな。強要しなくても、がんばる友だちを見つけたら、自然と拍手をくれるんだから・・・。愛音さんが持っている心だな。みんな、いい人だな。
先生「もう一人読んでくれる人いますか。」
今度はたくさんの子の手が挙がる。すごいぞ。苦手な子ども手が挙がる。みんな立派だ。でも、今度は、挙がりすぎて困っちゃう。だからこんなことを言いました。
先生「どうしても自分が読むという気持ちを、目で表しなさい。」
すると、すごい目をして、こっちをにらみつける子がいる。その目からは、青い炎が出ている。「せんせーい。ぼくに読ませないと、ただじゃおかないぞ。」そんな声が聞こえてきそうな目。その目をしたのは友哉さん。一番いい目をしていたから、友哉さんに読んでもらう。ゆっくりと、言葉の一つ一つをかみしめるような素敵な読み方。とってもいい。
本読みが苦手な人ほど、みんなの前でやりなさいって思う。いつか上手になるから。みんなの前で本読みした経験を積み重ねて、みんな本読みが上手になるもんです。
今日の学習問題
ふしぎの詩の表現工夫について考えよう。
先生「考えをつくる時間をとります。考えるのは、表現の工夫です。見つけたら①○○って感じで書き ましょう。2つ目を見つけたら、②○○って書いていきましょう。」
みんな一斉にノートに向かい、考えます。書き込みをどんどんしていく来弥さん。あげ羽さんも次々に見つけています。「あっ、これきっと、繰り返しだ。」「倒置法みーつけた。」「擬人法かもしれない・・・。」子どもたちのつぶやきがグッド。いいつぶやきをする子どもたちです。
ペアの伝え合い。上手なのは一瞬でペアが決まるということ。4月だったら、いつまでも決まらないペアが、ほんの10秒で決まる。これってすごいことです。だって、こどもたちは、「だれでもいい。」ということを思っている証拠だから。
先生「今日は二分間伝え合うぞ。条件は三つ。一つ目は、長い言葉で一人がしゃべり続けない。二つ目は、沈黙をつくらない。三つ目は、反応するってこと。」
すると数人の子がこんなことを。
「何も言うことなくなって、沈黙になったらどうしますか。」
わたしはこう答えました。
先生「そんな時は、困りなさい。二人して困りなさい。 困るのも勉強です。それでは、よーい、スタート。」
子どもたちは伝え合いを始めます。航平さんの声、雄大さんの声が響きます。二人は、この秋、話し合いを引っ張る男子の学習リーダーとなっています。かの子さんが身振り手振りで伝え、歩華さんが相手の顔を見ながら意見。この二人は、女子の発表をぐいぐい引っ張ってくれる、秋の発表ヒーローです。でも、そんな人たちだけでなく、どの子も相手の顔を見て、ちゃーんと自分の考えが言えて、とっても立派。すごい、すごい。翼君も奏斗君も瑠歌さんも夢奈さんも。みーんな時間まで伝え合いがパーフェクト。
さあ、このあと、一番たいへんなこと。みんなの前でみんなに向かって発表して、自分の意見を聞いてもらうんです。これができるようになりたいこと。そして、6年生が、がんばれるようになったこと。
優希さんが発表した。美舞さんが発表した。勝裕さんが発表した。意見が全てすばらしい「繰り返し」「倒置法」「7・5のリズム」「色の工夫」「対比の色」「擬人法」いろんな工夫を見つけてくる。かの子さんが、雄大さんが、来弥さんが、見つける。その表現の工夫による効果も、しっかりみんな言える。伊織さんが、嵩史さんが、春華さんが。気持ちがより伝わる言葉を、みすゞが選んでいるということまで発言できた。びっくりした。そのレベルの高さと、やる気本気と、言いっぷりに。みんな堂々としていた。意見の発表が苦手な子もたくさん手が挙がった。そしてやっぱりいいなぁと思うのは、いい発表には拍手がわくんだ。なんて温かい授業、子どもたちだろう。
実はこの1時間、2年生の子どもたちが見学に来ていた。2年生は、みんなびっくりしていた。そして、こんな感想を書いてくれた。
2年生の感想集
・はっぴょうがうまかった。みんなじがじょうず。みんないいしせいでべんきようしていた。
・みんながてをあげてすごいとおもった。
・みんなのかんがえがすごかった。いっぱいはなしあいをして、さすが6ねんせい
・じゅぎょうにみんながさんかしていた。
・はっぴょうしたあとに、はくしゅをしていたのがよかった。
・ゆうきさんがこまかいところもていねいにかいていた。
・6ねんせいはじぶんのためにがんばっている。
・かのこさんはいろんないけんやじぶんのかんがえをいっている。
・6ねんせいはいやなことばをつかわない。
・6ねんせいははんのうがすごい。
・はんざわさんがいいとおもう。りゆうは、ゆうきをだしてほんよみしたから。
・わたなべさんがいいとおもう。ゆうきをだしてよんだから。
・ゆめなさんがいいとおもう。りゆうはしせいがいいから。
・かなみさんがいいとおもう。りゆうははなしあいがうまかったから。
・かのこさんのへんじがいい。
・あゆかさんはじがじょうず。
・みんなこまらずやっていたのがよかった。
・たくさんのひとがじゅぎょうにさんかしているのがよかった。
・はっぴょうするときのこえのおおきさがいい。
・みんなおおきなこえではなしあいをしていた。
・あげはさんのはなしあいがじょうずだった。
・びぶさんがいつぱいてをあげていた。
・あげはさんのはなしあいがじょうずだった。
・つばささんのはなしあいがじょうずだった。
・こうりゅうさん、るかさんのみるところがいい。
・6ねんせいはしんけんにやっている。
・ぼくのはんちょう、かなみさんがいたよ。
・はるかさん、あせらずできている。
・6ねんせいがこんなにがんばっているなんておもわなかった。
・じゅりさんがいっしょうけんめいやってるのがすごかった。
・ペアをつくるのがとてもはやかった。
1時間が終わって、当番が前に出てきて、あいさつをした。「起立。」みんなが立ち上がった。その時に、伊織さんがこんなことをつぶやきながら立ち上がった。
「なんだか、今日の授業は、たのしかったなぁ。」
こんな気持ちで終われるなんて、やっぱりいい授業だったんだ。今、6年生は、自分たちの力で、みんなで、いい授業ができるようになっている。そんなことをあらためて感じた、金子みすゞの詩「ふしぎ」の授業でした。