2001年11月16日にわたしはお父さんになりました。お父さんになった11月16日になると、いつも思い出すんです。あの頃は、妻と二人でいろんなことに困ったなぁって。
赤ちゃんはうまくげっぷができないと、せっかく飲んだミルクを吐いてしまうことを知ります。おっぱいを飲ませたあと、背中をトントンとたたいてげっぷを出してあげるんです。最初の頃は自分もげっぷを出させてあげるのが下手で下手で、よくミルクを吐いていました。
泣き声がちょっとでも違うと「病気じゃないかな。」とはらはらするんです。おっぱいのしゃぶり方がいつもと違ったりすると、「どうしたんだ。」と心配をします。ちょっとでも震えていると、室温が気になってしまう。ほんのちょっとのことが心配でたまらない、そんな日々が続くんです。
夜なんか何回も起きます。最初の頃は2時間おきに「ぎゃんぎゃん」泣きます。どんなにつかれていようとも、どんなに眠くても、妻は眠い目をこすりながら布団から起き出して、おっぱいをあげます。それにつきあって、赤ちゃんの頭なんかをさすったりします。そんな夜が何日も続き、寝不足でふらふらしながら仕事に行くこともありました。最初の2~3か月は、たまらなかったな。教室で給食を食べた後、うとうとしてしまうこともありました。
初めて熱を出したときは困った困った。調子が悪そうに見えても、どこが痛いのか、どこが苦しいのかなんて教えてくれません。ただ「おぎゃーっ。」と泣いているだけ。苦しみが分かってあげられないことがつらかったです。夫婦そろっておろおろしました。
くしゃみをする。鼻水べろり。ティッシュで鼻水を拭いてあげる。またくしゃみ。鼻水べろり。その繰り返しで、鼻の下は真っ赤に腫れてきます。でも、鼻水は止まらない。鼻の下が真っ赤で痛そうだから、自分の口を使って鼻水を吸い取ってあげます。鼻水だけど、少しも気持ち悪いなんて思いません。口の中が鼻水だらけになろうとも、へっちゃら。
おしりはしょっちゅううんこだらけ。ご飯を食べてる途中で、「じゅるじゅる。」とうんこの音がすることもあります。口の中ではごはんをもぐもぐやりながら、おしりのうんこを拭き取ることもありました。おしめをかえていると、おしっこがとんでくることもありました。目に入ったこともあるけど、嫌じゃないんです。「元気なおしっこだな。」とぬれた顔はにこにこしてしまうんです。
買いたいものがあっても我慢をするようになります。そして、その分で子どものものを買うんです。時にはおしめ、時には絵本、時にはおもちゃ、時にはたまごボーロ。妻も買いたい服をがまんしていました。がまんをして、時にはミルク、時には赤ちゃんの服、時には小さな小さな靴。旅行に行きたいなぁと思ったりもします。でも、小さな赤ちゃんはまだ無理。旅行をあきらめます。見たいテレビ番組があっても、音がうるさいと泣くからテレビを消します。毎日いろんなことを我慢したんだよなぁ。これが親。わたしだけが特別ではなく、みなさんも同じですよね。
成長していく我が子にうれしい気持ちになるのはもちろんですが、いつからかちょっとしたことに目くじらを立てて怒ってしまうことがふえてきました。子どもが「お父さん、○○ができるようになったよ。」とうれしそうに報告してくれることがあっても、「ああそうか。」で終わってしまうこともあります。そんなことを、11月16日が近づくと反省するんです。
初めてはいはいができた時には、跳び上がって喜んでいたのに。初めて歩けた時には、写真を100枚も撮ったのに。「まんま。」としゃべった時には、日記に大きな文字で「しゃべったー。」と書き記したのに。「パパ。」としゃべった時には、顔をずっとなめたのに。ちょっとのことが、ちょっとずつできるようになっていく、それがうれしくてたまらなかったのに。
子どものちょっとした成長に大喜びしていた新米パパ時代の気持ちを大切にしようと、今年の11月16日にも思いました。