もう、何年も前の話ですが、こんなことをクラスの子から聞いたことがあります。
水泳の苦手な男の子でした。プールで7メートルを初めて泳げて、飛ぶように家に帰っていきました。家の人に、7メートル泳げたことを報告するためです。家に帰って、カバンを背負ったまま、第一声が、
「お母さん、水泳で7メートル泳げたんだよ。」
その子どもの声を聞いたとき、親はどう返したかというと、
「わあ、すごい。よくやったねえ。」
このようにほめると思うのです。しかし、残念なことに次のような言葉がつづいてしまい、子どものやる気はなくなります。
「でもまだ、たったの7メートルか。はやく25メートル、泳ぎたいな。がんばれ。」
その男の子は、次の日、このやりとりを私に話してくれました。
「ほめてもらえるかと思ったら、がんばれって言われちゃったもんねーっ。がんばったから言ったのに。」
親としてはほめているつもりなんでしょうが、子どもにとってはほめてもらったとは感じられない言葉です。
テストで100点をとった子がいました。国語のテストでした。いつもいつも100点という子ではなかったので、その子は、教室でテストを渡した瞬間に大喜び、みんなに100点のテストを見せていました。それくらい、うれしかったのです。
家に帰って当然、自慢げにお母さんにテストを見せました。お母さんは最初はほめてくれたそうです。
「すごいわね。がんばったわね。」
ここまでは、お母さんの言葉も100点。その後の言葉で、何もかも台無し。その子はそのままテストをくしゃくしゃにして、自分の部屋に行ってしまいます。
「国語で100点とれるんだったら、次は算数よね。」
どうですか。どの家庭でもやってしまいそうではありませんか。子どもは「ほめられた」と感じるのではなく、「いやみを言われた。」ととらえます。当然、この親はほめたつもりでも、子どもはそうは感じません。ほめるときはケチらないで、思いっきりほめてやることが大切です。
という自分も、ほめ上手とは言えませんが、ほめることにケチケチしないことは心がけています。だめなところは「だめーっ。」ってしっかりしかります。けっこう叱る方です。でも、「3つ叱って7つほめろ」ということわざの通り、叱ることよりもほめることをたくさんしていこうと意識しています。もちろん、むやみにほめていいということではありません。ほめるタイミングがあります。タイミングをはずすと,ウソっぽくなってしまいます。子どもが何らかの努力をしたとき、あるいは何らかの進歩が見られたとき、いいことをした時、ケチケチしないで、全力でほめています。
ほめることが苦手なお母さんのお話を聞いたことがあります。
そのお母さんは、子どもからすばらしいニュースを聞くと、さりげなく、その日の食卓のすみに、一輪挿しに花を飾るそうです。最初は、お父さんが気づき、お母さんにたずねると、お母さんは、
「今日、学校でほめられたんだって。」
こんなほめかたもあるんですね。