1年生の長なわの新記録は、この6年生の子どもたちのものです。この4年間、いろんな子どもたちが挑戦してきましたが、だれも越えられなかった記録です。絹村先生といっしょに、みんなでなかよく協力し合って練習して達成した記録なんでしょうね。今年は木下先生が、元気いっぱい1年生軍団と一緒に、君たちの記録越えに本気になっています。やぶられたくないような・・・、新記録を出してもらいたいような・・・。みんなはそんな気持ちでしょう。先生は、「1年生がんばれーっ。」って思ってます。1年生の喜ぶ顔も見たいんです。
チャレンジタイムに、昼休み、子どもたちは長なわの練習にがんばって取り組んでいます。特に、女子は毎日集まって、がんばっています。うまくみんなが集まらないこともあるようですが、女の子たちの中に、みんなに「練習しよう。」と呼びかける子の姿もあって、ほほえましいです。6年生がねらっているのは、学校新記録。現在の中2の子どもたちの記録です。
昨年の、この子たちの長なわ大会の姿をはっきり覚えています。どうして覚えているか。それは、わたしが「この子たちの担任をしたいな。」と思った最初だったからです。
わたしは、2年生の体育を担当していたので、2年担任の榛葉先生と、2年生の子どもたちと練習をがんばり続け、300回という2年生新記録を出すことができました。しゅうさんとハイタッチ。榛葉先生と涙目でハイタッチしました。うれしかったなぁ。
そのあとに、君たちの長なわを見たんです。そして、がっかりしました。長なわの実力にではありません。その雰囲気に。「どうせ」の空気をむんむん出していたのです。 「どうせ無理。」「だってろくに練習してないもん。」そんな雰囲気。笛の音が鳴って、なわが回り始めると、次々に子どもたちが失敗して。失敗しても笑っていたり、何回も失敗する人を「おい、しっかりやって。」と責める子がいたり。なわに入ることが苦手なのか、見ている子もいて。なんだかクラスの心がばらばらになっているように見えました。元気よく、かけ声を掛け合う出もなく、やる気に満ちた顔は少なく、せっかくクラスが、友だちが、一つになれるチャンスなのに、もったいないなぁと思いました。そして、1年生の新記録を出しておきながら、その後、まったくいい記録を出せないできていた理由がなんとなく分かりました。歯がゆく思いました。そして、「この子たちの担任になって、この子たちにぶつかってみたいなぁ。」と、心の中がめらめらと燃えてきたんです。
その日の夜、遅くまで職員室で大塚先生と語り合いました。大塚先生の目は真っ赤になっていました。「この子たちが、みんなで協力し合えるために、何をしたらいいんだろう。」わたしも一緒に考えました。本当なら、長なわがそのチャンスだったのに、大きなチャンスを逃したみたいで、考えがうかばず、2人で遅くまで悩みました。
それが、去年の長なわ大会の思い出です。2年生と喜び、榛葉先生とハイタッチ、そして、5年生にがっかりして大塚先生と夜遅くまで目を真っ赤にして語り合った日。あれから一年がたつんです。初めて君たちの担任になることを意識した日。君たちのために何かしたいと真剣に考えたあの日。
今年は、どんな長なわ大会になるでしょう。一週間後です。わたしは、6年生が、長なわ大会で学校新記録を出すことを夢見ています。一年間の歩みが、試されているような気がします。
ですが、もしも新記録が出なかったとき。それでもわたしは、がっかりしないと思います。それは、きっと、失敗しても、笑う子はいないからです。失敗した子に「何やってるだ。しっかりやって。」と責める人も、きっといないからです。みんなで声を出して、「はいはいはいはい。」と声を掛け合うに違いないです。「どんまい。」「いいよいいよ。」と、裕一さんが、夢奈さんが、最後まで声を出してくれるはずです。跳び方がうまくなかった、奏斗さんが、嵩史さんが、軽やかに跳べるようになった姿を見せつけてくれるはず。美佑さんが、歩華さんが、片足ジャンプでできるようになった姿に「よくここまで練習したなぁ。」と感動するんです。そんな姿をみんなが見せてくれたら、新記録なんてどうでもいい。本当に大事なのは、新記録を出すことではなく、みんなの心が一つになって挑戦できることです。苦手な人がみんなのためにがんばって、苦手な人のためにみんなが手をさしのべて、いくら失敗しても3分間あきらめないで挑戦できることです。今はまだ、足りません。それは、子どもたちが分かっていることと思います。残り一週間でなんとかするんです。みんなの心がさらに一つになるために、1人1人、何ができるか、何をすべきか、6年生の子どもたちには考えて、そして長なわ大会をむかえたいです。
がんばろう。歴史を変える子どもたち