2012/10/12 | 教え子からの手紙 |  | by:牧之原小教務 |
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数年前、ある教え子から、年賀状が届きました。もう、高校生になっていました。実は、卒業した後、手紙のやりとりも、年賀状のやりとりもなかったので、その名前になつかしくなりました。「めずらしいなぁ、年賀状なんて。それもハガキじゃなくて。」その子の年賀状がこんなでした。
「先生、新年あけおめ‼」
高校生ともなると、かわいらしい字で、見事に省略した今風の出だしでした。
「先生、おひさー。覚えてますか。」
忘れてはいませんが、すぐに顔が浮かんでこなかったので、「ごめんなぁ。」って感じです。
「わたしは今、高校生です。」
かわいかった小学生の時の顔しか浮かんでこないので、高校生になった姿を想像できませんでした。
「実は、わたし、高校生になったはいいけど、学校に行くのがいやでいやで、やめようかと思っていました。理由は、友達ができなかったからです。私の通っている高校は、中学の時の友達が少ないんです。クラスには一人もいません。だから、いつも話があわずに、浮いている感じで、みんなの中にとけ込むことができませんでした。この一年間は苦しかったです。でも、今は大丈夫なんです。学校は楽しくないけど、なんとか友達もできて、楽しくなってきそうって感じです。」
不安な出だしでしたが、ここまで読んで安心しました。
「私がなんとかがんばれたのは、小柳津先生のおかげなんです。小柳津先生とは卒業してから全然あってないけど、私は高校生になって、小柳津先生に助けてもらったんです。友達ができなくて、苦しかった時、小柳津先生が卒業式の後、私たちに言った言葉をふと思い出したんです。それは、『どうしようもない時は、学級便りを読め。』」
わたしは先生になってから、一日も欠かすことなく学級だよりを書き続けました。その子を担任した時も、学級便りに命をかけていました。将来もしもつらいことがあった時は、学級便りがきっとみんなを助けてくれる。がんばっていた自分たちの姿が学級便りの中にたくさんあるから、きっとがんばる力をくれる。そんなことをお別れの日には毎年言ってきました。
「私は、先生の言葉を思い出して、机の引き出しの奥にしまってあった学級便りのファイルを出して、読んでいきました。なつかしいとっくんが出てきたり、陸上の幅跳びをがんばった私のことが書いてありました。読んでいたら、本当に力がわいてきました。」
その後の彼女の文章は、勇気を出して友達に話しかけ、部活に入って仲間をつくり、そして今、ようやく学校が楽しくなりつつあるという内容でした。長い長い手紙でした。
その時の学級便りは、全部で365枚。役に立ててよかった・・・。
先生の一言一言、実は子どもたちにとってはとても重要で、ある日だれかの勇気になることもあります。目の前の子どもたちもいつかどこかで、必ずピンチを経験します。ピンチに負けない強い気持ちなんて、どの子ももっているものじゃありません。
子どもたちの中には、今現在も心の中にピンチを抱えている子もいるでしょう。そんな子どもたちが勇気をもてるように、自分の言葉に責任をもちたいです。学級のないわたしは学級だよりは書けませんが、子どもたちの背中に向かってメッセージをおくりたいです。
みんな、がんばれ。