2015/01/15 | 6年生の保護者の皆様へ | | by:教頭 |
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北国を紹介する番組で、印象に残っているのが、キタキツネのドキュメンタリーです。キタキツネが、厳しい冬の北海道で、どんな暮らしをしているかを紹介する番組でした。 キタキツネは、北海道の広い広い原野にすんでいる動物です。1匹のキタキツネが、4匹の子供を産むところから始まりました。1匹の母ギツネと、4匹の子ギツネは、厳しい北海道の自然と闘いながら、必死に生きていきます。母ギツネは、子ギツネたちを守り、厳しい自然の中でも、子どもたちは実に幸せそうでした。雪の上で子ギツネがじゃれ合うシーンは、とてもかわいらしく見えました。母ギツネは、子ギツネを守るだけではなく、勉強もさせます。勉強といっても、漢字の書き取りではなくてえさの捕まえ方、冬の過ごし方、危険な場所などです。母ギツネが見本を見せ、子ギツネに教えていくのです。子ギツネの行動範囲もだんだん広がっていくのも、母ギツネが教えてあげるからです。
しかし、いよいよ子ギツネの独り立ちの日がくると、母ギツネは豹変するのです。子ギツネ想いのいいお母さんだったのに、突然態度が変わり、我が子に向かって牙をむけます。そして、天敵を見るような目で、子どもに近づくと、襲いかかるのです。とても我が子に対するものとは思えません。当然のことながら、子ギツネはびっくりします。だって、ついさっきまで、優しいお母さんだったのです。何かの間違いだろうと、母ギツネにすりよっていきます。甘えるような声も出します。しかし、母ギツネは、そんな態度で近寄ってくる自分の子どもに対して、さらに牙で襲いかかります。子ギツネの首のあたりに、少しだけ血がにじみました。それでも母ギツネは容赦しませんでした。
最初の1匹が、遠くに逃げていきました。何度も何度も後ろを振り返りながら、一人で逃げていきました。母ギツネは、そんな1匹目の子ギツネの方をずっと見ていました。顔は怖いままでした。最初の1匹が、やがて林の中に消えていきました。すると母ギツネは、次の1匹を標的にします。次の1匹もとまどいながら、体中を血で染めて、また違う林に消えていきます。母ギツネは、順番に、そして最後にはすべての子ギツネを追い出してしまいました。残った母ギツネの口のまわりは、子ギツネの血で染まっていました。母ギツネも、体に傷があり、立っているのがつらそうで、よろよろしていました。つらいのは、傷の痛みだけではなさそうでした。大切な我が子との別れ、それが野生動物の厳しさです。なんだか、悲しい親の姿だなぁと思いました。キタキツネの世界では、その後親と子どもが再会してなかよく暮らすなんて事は絶対にないそうです。
北海道という厳しい自然の中で生きていくためには、そうするしかないのです。子ギツネたちは、いつまでも母ギツネに甘えているわけにはいかないのです。いつまでも、母ギツネのところにいては、弱いキツネになってしまいます。すぐに死んでしまうのです。だから、母ギツネは、つらくても我慢して、我が子を攻撃し、追い出したのです。別れの日までにすべてのことを教えて、やるべきことはすべてやり終えたという親としての自信がなければできないことです。 人間の世界は・・・、キタキツネのように、ある日を境にして、親が子どもを攻撃して家を追い出すなんて事はないことです。キタキツネのように、独り立ちした子どもと、顔を合わすこともないということはありません。でも、キタキツネと同じように、どこかで子どもを自立させなければいけません。そんな自立の時が来たのかなと思います。小学校から卒業するときは、ちょうどそんな時なんだと思います。
どうでしょう。子どもたちを自立させることができますか。何もかもは無理としても、中学生になるのですから、多くのことで自立をさせなくてはいけないと思います。もう、中学生ですから。
これからの未来が、どんな社会になっていくか、想像すると今よりもつらい時代になっていくのだろうと予想してしまいます。私たち大人が、子どもたちに残さなければならない社会はそんな社会です。北の大地のように、つらい時が、この子たちにはまっています。そんな時に、すぐに根を上げて、すぐに助けを求めてくるようでは困ります。一人でも、厳しい自然に立ち向かえるくらいの強さを持った人になっていないと。そんな人に育てておかないと。そのためには、キタキツネのように、生き方を教え、自信を持って子どもたちを自立させられるくらいになっていたいです。本当の自立の時は、まだまだ先かもしれませんが、小学校を卒業する今を一つの節目と考えて、子どもの自立について考えてください。 トム・クルーズ教頭より