| 2020/04/28 | 校長先生の初恋物語 第6話 | | by:校長 |
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「きんに君を助けたのは」
「ボキッ。」といういやな音。その音で、きんに君に何が起こったのか、すぐに分かりました。
その場にいたみんなは「ひゃーっ。」と悲鳴を上げました。悲鳴に続いて、きんに君が「ぎえーっ。」とうめき声を上げました。
きんに君の足を見ると、右の足首が、ぐにゃりと曲がっていました。骨が折れているように見えました。きんに君は、顔をゆがめて、痛がっていました。それまで近くで、大笑いしていたみんなは、あっという間に、きんに君から離れていきました。無理もありません。
とっくんは、足長君をさがしました。学級委員の足長君なら、きんに君のこのピンチをなんとかしてくれるはずです。ところが、ついさっきまで、他の男の子と一緒にきんに君のパフォーマンスに大笑いしていたのに、もう教室の中にはいません。足長君はきんに君の足の曲がり方が気持ち悪くて、すたこらさっさと廊下に逃げていました。まったく頼りにならない学級委員です。地球の平和なんてとんでもない、友達の骨折も救えないんです。
そんな友だちのピンチで、なぜかとっくんは力がわいてくるのです。「もっと男らしくなってよ。」ダンプさんの、あの言葉が背中を押してくれるんです。
目の前に苦しんでいるきんに君がいます。以前の弱虫とっくんだったら、他のみんなと同じように逃げていたでしょう。でも、ダンプさんの一言が、弱虫とっくんの背中を力強くおしました。「こんな時こそがんばらないと。よし、ぼくがきんに君を助けてやる。」とっくんはきんに君に近づき、きんに君を抱きかかえました。体の小さなとっくんですが、なんとかきんに君を抱きかかえることができました。
「きんに君、ぼくが保健室までつれていってあげるよ。」
きんに君をはげまし、歩き出します。しかし、筋肉のかたまりは重たいのです。小さなとっくんは、ヨロヨロしながら、少しずつ進みました。とっくんが一歩前に進むたびに、きんに君は叫び声を上げます。「ウェーッ。」「ぐぇーっ。」「ホゲーッ。」「アジャーっ。」冗談でやっているわけでなく、本当につらそうでした。きんに君を抱えたとっくんの後ろに、クラスのみんながちょっとはなれながらぞろぞろついてきました。だれも手助けはしてくれませんでしたが、仕方ないと思いました。きんに君の折れて曲がった足を近くで見ることができないのです。でも、その中の一人が、ようやくとっくんに協力してくれました。
「ぼく、職員室に行って、にょろひげ先生を呼んでくる。」
その子の行動で、ようやく目が覚めたみんなが次々に協力をしてくれました。とっくんの前にたち、他のクラスのみんなをどかしてくれたり、階段があることを教えてくれたり、みんながとっくんに協力してくれました。でも、とっくんにも限界があります。保健室まではまだまだ遠いマンモス小学校の廊下で、ついに力尽きて、抱きかかえているきんに君を落としてしまいそうになるのです。きんに君を落としてしまったら大変です。折れた足が、もっとひどいことになってしまうかも。必死にこらえるとっくんでしたが、ついにこらえきれなくなって・・・。つづく 次回予告 ヒーローはだれだ