「ヒーローはだれだ」
　力つきたとっくんは、もうきんに君の体重を支えることができなくなっていました。一歩も前に進めません。目の前にある階段なんて無理です。それどころか、階段の上からきんに君を落としてしまいそう。限界です。
　その時です。
「どうしたの。とっくん。」
階段の下から、ダンプさんがやってきました。
「きんに君が大変なんだ。保健室まで運びたいんだけど、ぼくはもう無理。限界だよ。ダンプさん。きんに君を落としちゃいそうだよ。助けて。」
するとダンプさん、
「まかせときな。」
きんに君を軽々と抱えました。巨体で怪力のダンプさん、きんに君は筋肉で重たいのに、まったく重そうに見えません。ダンプさんは、きんに君をだっこしたまま、階段を猛スピードでかけおりて、あっという間に見えなくなりました。その姿は、たくましくて、とてもかっこよく見えました♥。
　
その後、とっくんも保健室に向かいました。きんに君はすでに、ベッドの上で保健室の先生、担任のにょろひげ先生と、お話をしてました。とっくんは、ダンプさんと一緒に、教室に戻りました。
「すごかったぜー。きんに君の足、完全に折れてたよ。」
教室に戻ると、足長君が状況をみんなに説明していました。足長君のまわりには、たくさんの人がいて、足長君の話に耳を傾けていました。足長君は、ちゃっかりしています。自分は真っ先に逃げてしまったのに、なにもしていないというのに、いつの間にやら、きんに君を助けたヒーローみたいなことを言ってました。足長君が演説をしているその時、ダンプさんが足長君に向かって、
「足長君はなにもしてないじゃない。きんに君を助けたのは、とっくんでしょ。今日は、とっくんがヒーローよ。」
そう言ってくれました。足長君はその一言でしょんぼりしてしまいました。ダンプさんの言葉を聞いて、その場にいたみんなが、とっくんの周りに集まり、とっくんに向かって拍手をしてくれました。
　その時かもしれません。とっくんは、ダンプさんのことが好きになっていました。普段は怖いダンプさんですが、気の弱いとっくんの心の中で、とてつもなく大きなハートマークができました。
　でも、とっくんは悩みました。実を言うと、とっくんには、前々から大好きだった女の子がいたのです。それは、よしこさんです。よしこさんは、かわいかったし、やさしかったし、勉強も運動もよく頑張るし、マンモス小のアイドルです。男の子はみんなよしこさんが大好き。足長君だって、よしこさんに♡マーク。
　さぁ、困った。とっくんはよしこさんを選ぶのか、ダンプさんを選ぶのか。よしこさんのハートをゲットできるのか。ダンプさんとラブラブになるのか。足長君もからんで、この後、初恋物語は愛の火花バチバチのすごいことになっていきます。　つづく
　　　　　　　　　　次回予告　運命の席替え