心にぽっと灯りがともる
年間を通して、保護者の方が読み聞かせをしてくださる学校って、なかなかないんですよ。今日も、6名の方が来てくださり、読み聞かせをしてくださいました。ありがとうございます。
校長室の入り口に、数冊の本が飾られています。その本を、通りかかった子供たちが手に取っています。この本は、司書の中西先生が、飾ってくださっているものです。ここにある一冊から、読書の世界が広がっていく子もいます。中西さん、ありがとうございます。
本と言えば、わたしには忘れられない本との出会いがありました。
高校生の時です。
高校生の時、私は剣道しか興味がありませんでした。剣道が人生のすべてといってもいいくらい、剣道にのめり込んでいました。剣道の強い大学に行って、もっと腕を磨いて、剣道が思う存分できる警察官になりたい。小中学生の頃は、先生になりたいと思っていましたが、剣道のことしか頭にない毎日により、警察官になるという夢は、100%固まっていました。
しかし、右手首の骨折が原因となり、剣道をあきらめなくてはならなくなりました。「剣道を続けていくことは不可能。」と医者からの宣告を受け、夢がなくなってしまいました。初めての挫折でした。これからどうしていいのか、さっぱり分からなくなってしまいました。
国語の先生が、灰谷健次郎の本の、読み聞かせをしてくれました。毎日少しずつ、何日も何日もかけて、読んでくれました。その本が、「兎の眼」という本です。小谷先生という若い女の先生と、ハエを飼っている子ども、差別や偏見と闘いながら、小谷先生は子どもたちと一緒になって、人間として成長していきます。その物語は、それまで読んだどの本よりも感動しました。その中に登場する、足立先生に憧れました。
「兎の眼」は、絶望していたわたしの心に、ぽっと灯りをともしてくれました。目の前の道が真っ暗になってしまったのに、めげずに歩いて行く勇気を与えてくれました。「小学校の先生」になりたいという夢が、高校3年生の秋が終わる頃にできました。
警察官にはなれなかったけど、今の人生に全く後悔はなく、むしろ、あの時挫折を味わって良かったと思っています。
時として、ある日突然、心にぽっと灯りがともるような、そんな本と出会うことがあります。牧之原小学校の子供たちも、そんな本との出会いがいつかありますように。一生大切にできる本と、人生の中で出会えますように。